「英語力の前に国語力を伸ばせ」は本当か
教育関係の本や雑誌を見ていると、よく目にするのが、「英語力の前に国語力を伸ばしましょう!」といったセリフ。
これは個人的にも正しいと思っています。
決して「日本語が発達するまで英語を習い始めてはいけない」という意味ではなく、「英語力を伸ばしたかったら、日本語の能力も同時に高めていかないといけませんよ」という意味です。0歳から英語に触れることが珍しくない昨今、「英語の前に日本語!」とか言われると、戸惑うママたちもいますので、そこは強調しておきます。
さて、「国語力」というと、とても幅ひろいので、ここでは、「日本語の語彙力」に限って話を勧めたいと思います。
よく2~3歳の子が英語で、I want a banana! なんて言うと、周りの大人は「この子すごい~!」ってなるのですが、(それはそれで決して悪いことではないのですが)一方で、多くの人が子どもに身につけてほしいとイメージしているのは、将来的に仕事で英語が使えるレベルだと思います。その場合、少しぐらい英会話ができてもあまり役に立ちません。目指すべきは、きちんと人を説得できる文が書けるとか、話ができるといったレベルであって、それは日本語でも英語でも同じはずです。
英語が日本語を超えることはありえない
さてここで、ひとつ、はっきり言っておきます。
基本的にはどれだけ努力しても、あなたの外国語能力は母語である日本語能力を超えることはできません。
日本語が貧しい日本人の英語は貧しいままです。
例えば、inductive methodとdeductive methodという二つの論理的推論方法がありますが、それらは、日本語に置き換えると、帰納法と演繹法です。
ちなみに帰納法とは「個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする論理的推論のこと」とウィキペディアにはありますが、まずこの意味すら日本語で理解できなければ、ほとんどの日本人はinductive methodを理解することは不可能です。
いわゆる「英語が仕事で使えるレベル」というのは、まず、「日本語が仕事で使えるレベル」に達していないと難しいということです。別に仕事で「帰納法」という言葉を使わなくっても、的確な言葉で論理的に話すということは求められているわけで、一般的に商社勤めのビジネスパーソンが、輸入するワインを選定するときに、「このワインやばいぐらい旨いので売れると思います。」とか言ってるのと、" This wine is damn good. I think it sells well." とか言ってるのは(見た目、英語でしゃべってるとすごーい!ってなるかもしれませんが)何にも変わりません。やっぱりビジネスパーソンなら、「このワインは香りが豊かで適度な渋みがあるので、日本人好みです。特に低価格帯の輸入ワイン市場であれば、受け入れられる可能性は高いですね」ぐらい言いましょうよ。ということです。
言語は思考の道具
さらに言えば、言語は思考の道具です。つまり、私たちは言葉を使って物を考えるのです。だから、持っている言葉の数が少ないと、思考も深まりません。
残念ながら、これは英語でも日本語でも同じです。
百ます計算の生みの親と言われる教師、岸本裕史先生の著書『見える学力見えない学力』にこんなことが書かれてあります。
「知的能力の中核は言語能力です。俗に頭がいいとか、高い知能を持っていると言われているのは、言語を思考の道具として自由に駆使したり、多彩に概念を操作できる能力が優れているということなのです。この能力は、生まれてから後の言語環境のよしあしと学習によって決まってきます。」
もう、首が取れそうになるぐらいうなずきました。(笑)英語も言語ですけれど、日本人にとってはまず母語の日本語のベースがちゃんとあるということがなにより大事で、そのなかでも語彙力は、小さいころからの積み重ねでどんどん伸ばしてやりたい力なのです。そこから思考力が伸びていく。逆に語彙の土台が小さくてぐらついていると、積み上げるものも積み上げていけない。思考力もそこそこだし、さらに英語を勉強したところで実りは少ない。ということになっていきます。
どう子どもの語彙力を伸ばせばよいか
ママにとっての関心は、「じゃあどうしたらよいの?」ということだと思いますが、今日は長くなってしまったので続きは次回。
次回は、我が家で実践している「家庭でできる簡単語彙力アップ法」を紹介したいと思います。ちなみにうちの子は現在小2と4歳です。小さいお子さんでもできる語彙力の伸ばし方をご紹介しますのでお楽しみに!