「わからない時は聞いていいの?」
ある日の小学生クラスでの出来事でした。
ペアでの会話練習。あるペアが、お互い黙り込んで全く課題が進みません。とうとう他のペアはみんな終わったというのに、そのペアだけが、黙ったまま立ち尽くしていました。
それまでは黙って見守っていたのですが、とうとう声をかけてみると、ペアの一人が言いました。
「先生、英語がわからない時はお友達に聞いていいの?」
「もちろんいいよ。わからないからずっと黙っていたの?」
「うん・・・。」
最近わからないと黙り込んでしまう子がとても多い!
これはちょっとまずいです。皆さんのお子さんは大丈夫ですか?
わからないことを「わからない」と言えない
わからないことを「わからない」と言えない子
困っているのに「助けてほしい」と言えない子
がたくさんいます。
勉強だけの問題では済みません。人間関係のトラブルやいじめの問題にも通じます。
自分の抱えている問題を、コミュニケーションを用いて解決しようという姿勢が育たなければ、大人になっても、すべてのことで困るわけです。
なぜ「分からない」と言えなかったのか?
わからない時に、「わからない」と言えるようになるために、まずその子を含めた全員に問いかけました。
なぜ「わからない」って言えなかったのか?
出てきた答えはおおむね以下の通りでした。
- 恥ずかしいから
- 聞くのが悪いと思うから
恥ずかしさに勝つには?
「質問することは恥ずかしくなんかないよ」といくら言い聞かせても、その気持ちを子どもが自分で克服するのは難しいものです。
これは教師サイドの問題でもあるととらえて、以下を実践することにしました。
- 先生の「失敗エピソード」を紹介する
子どもから見た教師は「すごい人」に見えるかもしれないけど、そんな人の失敗エピソードは子どもたちを安心させます。
- 先生だっていっぱい分からないことがあるので、教えてほしいとお願いする
例えば、流行りのアニメを先生はちっとも知らないけど、子どもたちはよく知っています。まず、「先生がアニメについて質問しても、みんなは先生のこと馬鹿にしたりしないよね?何かを知らない・分からないからといって、馬鹿にする人はここにはいないよ。」と伝えました。そのうえで、毎週私が知らないことをみんなに教えてもらう時間を取るようにしています。
- お友達と教えあって、一緒に英語をうまくなることを目指していると説明する
このスクールでは、教えるのは先生だけじゃない。お友達同士で分からないところを教えあって、みんなで一緒に英語を勉強するのだと伝えました。だから、わからないことを質問することも大切だし、相手がわからなくて困っている様子だったら、待つんじゃなくて、自分から声をかけて助けることも大切だと伝えました。
これは教室での話ではありますが、親子関係に当てはめてみても同じことが言えそうです。
親自身が、完璧ではないことを見せたり、知らないことを堂々と表に出して質問する姿を見せていると、子どもも変わっていく気がします。
「質問すること」は迷惑をかけること?
質問したら、悪い=迷惑になるんじゃないか?と考える子どももいます。大人でもそう考える人がいるでしょう。
これに関しては、子どもたちにこう説明しています。
質問することは大切なことです。先生はみんなの質問をいつも待っています。
質問することは迷惑をかけることだと思う人もいるかもしれません。
大人は「人に迷惑をかけるな」と言うけれど、迷惑をかけてもいいです。
迷惑を一つもかけずに生きていくことは難しいからです。
代わりに、みんなも人から迷惑をかけられることがあるけど、できるだけ許せる大人になってください。
日本人の親がよく言う「周りに迷惑かけちゃだめだよ。」は、時として子どもを縛る呪いとなります。
あれもこれも「迷惑かも?」と思うと何もできなくなってしまう。賢い子、お利口な子ほど、その呪縛にとらわれてしまいがちです。
質問できないのも、困っていると伝えられないのも、もしかしたらそんなところに原因が隠れているのかも・・・と思う時があります。
「迷惑をかけないようしよう」ではなく、「迷惑はかけるし、かけられるものだ。その時にちゃんと謝ったり、許したりできる人になろう。」
という価値観を教えるほうが、子どものためになるのではないかなと感じています。
「助けて」といえる環境づくり
教育の場でも、家庭でも、やはり大切なのは環境づくり。
「助けて」「教えて」と素直に言える環境を作っていかなければ、と思います。
そこにいる大人が、自分の未熟さを見せることも時には大切。強く導くだけが教育ではないのだと改めて感じました。
この前教室のカギを忘れてレッスンできませんでした(←絶対あかんやつ)井本先生は意外とこんな人です。(笑)自己紹介はこちら